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土地売却の基礎知識
「土地は絶対に手放すな!」は昔の話
以前は「土地は絶対に手放すな」というのが、土地活用の常識でした。
しかし、人口減少社会に突入した今、どんな土地でも保有している方が正解かというと、そうとは言い切れない時代に移りつつあります。
例えば、人口減少に歯止めがかからないような田舎の土地は、持っていても保有コストがかかるだけ。
せいぜい資材置き場か太陽光発電施設ぐらいにしか活用できず、しかもそのような田舎物件は全国で激増しているため、貸し出そうにも借り手が見つからない心配があります。
また、太陽光発電事業も、制度が変われば利益が出ない事態に転落する懸念も付きまといます。
田舎物件に限らず、地方の多くの市町村では高齢化(若者の流出)と人口減少が進んでおり、土地活用策の王道とも言うべき、アパマン事業も先細りしていく事は否めません。
都市部とて「2022年問題」と呼ばれる生産緑地の大量放出も心配されており、条件の悪い物件は空室や家賃低下に直面する懸念もあります。
「土地活用の市場動向と展望」に関する記事はこちら
つまり、土地さえ持っていればどんな地主さんも勝ち組になれた時代は終わり、地主さんの中にも「勝ち組」と「負け組」が出てくる時代に移ろうとしているわけです。
従って、長期的に収益性が見込めない土地については土地活用を取り入れても、住宅ローンなどの、初期投資だけが残ってしまう事になりますから、思い切って売却することも、土地活用策の選択肢に入ってくることになります。
そこで気になるのが一体”いくらで売れるのか”という点。
高く売れるのであれば、売却資金を使ってより条件の良い土地を購入して土地活用することも考えられます。
反対に安くしか売れないのであれば、保有コストによっては子や孫にそのまま残すという選択肢もあります。
半世紀も過ぎれば、どんな土地需要が発生するか未知数だからです。
では、まず土地の売買価格の決まり方について見ていきましょう。
土地価格の決まり方
土地価格には3種類の価格があります。
まずはその違いを理解しましょう。
査定価格
不動産会社などに出してもらう価格で、以下のような指針を基準に一括査定してもらいます。
- 周辺の路線価と面積
- 過去の売買取引実績
- 所在地(駅や学校からの距離等)
- 建物の有無 等
査定額は不動産会社等によって多少異なりますので、複数の業者に査定依頼を取り入れてみると良いでしょう。
売り出し価格
売り出し価格とは、地主さんが売りに出す価格です。
土地の値段は地主さんが自由に決めて良いので、査定価格を目安に地主さんが売りたい値段をつけて売りに出すことができます。
もちろん、それで売れるかどうかは買い手次第。
多くの場合、買い手から値引き要求されるので、その分のバッファーとして査定価格に若干上乗せする程度にします。
あまり価格査定とかけ離れていると問い合わせすら来なくなるので“吹っ掛け過ぎ”は禁物です。
また、”早く売ってしまいたい“と思っている不動産会社の場合、売りやすい売り出し価格(=安値)に誘導するので、注意が必要です。
この場合も複数の業者に相談し、高すぎず、安過ぎずという売り出し価格を探るのがポイントです。
実際の売却価格
売り手と買い手の双方が納得して不動産売買契約書を交わした価格が、実際の売却価格です。
土地は一点もので、土地の広さや形状も、道路付けも同じものはないため、実際には売り手と買い手が協議して売却価格が決まります。
つまり、査定価格は「目安」や「相場」であり、売り出し価格は売り手の「言い値」でしかないわけです。
昔のように複数の買い手が群がるような場合は、強気の価格交渉もできましたが、これからはたった一人の買い手が、地主さんの足元を見て〝買い叩く“という事態さえ懸念されます。
場合によっては不動産査定を下回る事だってあり得ることは覚悟しておく必要があり、いくらまでなら値下げに応じるかという心づもりも必要です。
あまりに安い買い取り価格提示にがっかりし、契約を流した後で「でもよく考えたら、あの時売却しておいた方がマシだった…」と不動産取引に失敗したことを後悔する買主さんが意外に多いからです。
土地に建物が建っている場合の売却の場合、建物によっては、容積率にて土地の査定価格が決まる場合もあります。
土地売却のメリット・デメリット
多少安くても売却した方が良いのには理由があります。
売却した場合のメリットを見ていきましょう。
保有コストがかからなくなる
毎年の固定資産税や都市計画税が必要なくなります。
住宅であっても、空き家が建っていた場合は「迷惑空き家」に認定されると固定資産税が6倍に跳ね上がるリスクもあります。
空き家の荒廃を防ぐには除草・剪定、修繕などの維持コストも発生するので、このような保有コストから一切開放されるのが売却のメリットのひとつです。
まとまった現金が入る
売却の場合、売却代金が現金として手に入ります。
不動産投資の成否は「自己資金の割合」をいかに大きくするかに掛かっていると言ってもよく、まとまった現金でより有利な投資物件を手に入れるという選択肢も生まれます。
リスク回避ができる
不動産経営には様々なリスクが付きまといます。
地震や台風、洪水などの天災や、火災、自殺といった想定外の事態で経営が困難になったり収益性がダウンしたりする心配もあるのです。
これらの不測の事態に備えるには保険のコストもかかってきます。
また、建物を建てて土地活用する場合は、多額の借金をするため、今後の金利上昇リスクを背負うことにもなります。
思い切って売却してしまえば、このようなリスクから一切開放されることになるのです。
一方、売却するデメリットもあるので、こちらも事前にチェックしておきましょう。
相続税には注意
現金は額面がそのまま相続額として計算されるため、資産の総額や相続人の人数によっては、土地として登記されている場合よりも、相続税が発生しやすくなるので注意が必要です。
手数料や譲渡益課税
土地を売却すると、印紙税や測量費、仲介手数料などが発生します。
大体売却価格の5%程度は諸費用で消えると言われています。
また、売却して得た利益に対しても譲渡所得となり、「譲渡益課税」されるため、売却代金がそのまま手元に残るわけではないので注意しましょう。
短期譲渡所得の場合、長期譲渡所得よりも、譲渡益課税が高くなってしまいますから、土地の保有年数には注意が必要です。
(譲渡益課税や、譲渡所得税は、土地の所有期間と売却した土地の使用目的などによって異なってきますので、あらかじめ不動産会社などに確認しておきましょう)
売却を検討すべき土地
売却を検討すべき土地というのは、一部の条件の悪い土地と考えがちですが、今はそうとは言えません。
需給バランスが崩れ「貸し手市場から借り手市場へと大転換」する可能性があるわけですから、あらゆる地主さんにとって、もう他人ごとではありません。
例えば以下のような条件の土地の所有権をもっているのならば、売却も視野に入れておく必要があると言えるでしょう。
人口減少エリア
まず、人口減少が始まっているエリアに所有する土地。
人口減少は若者の流出を招き、それはそのまま高齢化につながります。
高齢化と人口減少のダブルパンチに襲われるエリアでは経済活動のすべてが衰退し、アパマン経営はもちろん、コンビニなどの商業向けの需要も先細りして行くのは避けられません。
高齢者向けの施設なら20年程度は安泰かも知れませんが、30年後40年後を展望すれば負の資産にもなりかねません。
もしも今現在、収益の出ている不動産を所有しているのなら、早ければ早いほど有利な条件で売却できるわけですから、早めに売却を検討するのが得策。
逆に売却に出遅れ、売り物件が氾濫してからではどんなに安くしても購入希望者が見つからない事態も懸念されるのです。
所有者が、共有名義であると、売却時期を逃してしまう事が多いとされていますから、注意が必要です。
条件の劣る土地
人口減少は始まっていなくとも、駅から遠い、生活施設が整っていない、地盤が悪い、洪水の危険がある、迷惑施設がある、日当たりが悪い、治安が悪い、土地の形状が悪いといった、マイナス条件のある土地は、借り手市場になれば無向きもされなくなる危険性があります。
今はそれなりの引き合いがあったとしても、20年後、30年後にはどうなっているかはわかりません。
少しでも高く売れる時期に売却し、より条件の良い土地に乗り換えて行くという努力は、今後ますます重要になってくるはずです。