今回は、旗竿地に適した土地活用の方法について解説していきます。
旗竿地って何?
旗竿地とは、その名の通り旗ざお状の土地のことです。別名、「敷延」(しきえん)とも呼ばれています。
虫食い状のような形で、前面道路に接する間口の部分が狭くて細長く(この部分が竿です)、その奥に広い土地(この部分が布です)がある土地のことです。
旗竿地のメリットは?
一見使いづらいだけでデメリットがなさそうな旗竿地ですが、意外と市場に多く出回っており、しかもそこそこ売れています。
旗竿地には一見しただけではわからない、意外と多くのメリットが有るのです。
資産価値が低く、固定資産税が安くなる
旗竿地のような歪な形状の土地は市場ではあまり高く評価されないため、実勢価格が安くなります。
実勢価格が安くなればそれにともなって固定資産税評価額も安くなるため、毎年の固定資産税・都市計画税の負担が少なくなります。
現時点ですでに旗竿地を持っている場合は、その固定資産税評価額の低さを十分に活かすべきです。
前面道路から離れているので、騒音などに悩まされにくい
旗竿地に建物を立てる場合、建物はその周辺にある別の建物で覆い隠されてしまいます。
建物が見えないのは望ましくないことにも思えますが、目立たない分前面道路の喧騒が気にならない、という考え方もできます。
静音性を気にする現代人にとって、旗竿地に建てられたアパートやマンションなどは意外と住みやすい家なのです。
前面道路から見えづらいため、外観よりも内装にお金をかけられる
旗竿地の建物は見えづらいため、外観にそこまで気を使う必要がなくなります。
外観に使うお金が少なくなれば、その分内装にお金をかけることができます。単身者は自分のアパートやマンションの外観にこだわることがあまりないため、そうした人のニーズを汲むのに向いています。
リビングなどこだわりの内装やデザインで、間取りや家づくりを実現すれば、平均入居期間も長くなるはずです。
このように意外とメリットが多い旗竿地ですが、一方で当然デメリットも存在します。
旗竿地のデメリットは?
建設費用がかさむ
旗竿地は接道長さが短いため、資材を運び入れたり、建設重機を土地の中まで入れたり、建築作業の効率が落ちたりするため、建設費用がかさみやすいです。前述の通り旗竿地は外観にそこまで気を使わずともいいというメリットが有るため、見えづらい部分はコスト削減してその部分を穴埋めするといいでしょう。
接道長さが2m以上ないと建物が建てられない
所有している土地に建築物を建てるためには、建築基準法などで定められている各種制限をクリアする必要があります。
そしてその中でも特に重要な制限の一つに、「建築物の敷地は、幅員4m以上の道路に2m以上接しなければならない」というものがあります。
建築基準法上の「道路」の定義は、日常的に使う「道路」とは別物なので注意が必要です。
なお、この接道義務があるのは都市計画区域、及び準都市計画区域のみとなっています。
竿の部分には建物を建てづらい
建築基準法や民法などで、建物は土地の境界線から一定の距離(最低でも50cm)話して経てなければならないと定められています。
つまり、旗竿地の竿の部分の幅が1m以下の場合は絶対に建物が建てられないことになります。
1m以上あっても竿の部分は建物の幅が非常に薄くなってしまうため、建物の形状が非整形になりがちです。非整形な建物はユーザーに取って使いづらいだけでなく、耐震性に劣るなど様々なデメリットがあります。
一般的に竿の部分には、駐車場を作って車を置いたり、庭にしたり、という活用方法が多いようです。
日当たりが悪く、それ以外の特長がないと賃料が安くなりやすい
旗竿地は土地の周りを周辺の建物で囲われることになるため、どうしても日当たりが悪くなります。
竿の部分が南側にある場合はある程度日光を入れることができますが、そうでない場合はそれを穴埋めするほどの長所がないと賃料が安くなりがちです。
共同住宅は共用部分(廊下や階段)のスペースがありますが、長屋にはそれがなく、玄関は互いに独立しています。
そして、長屋の中でも上に積み重なったものを重層長屋と言います。重層長屋の大奥は2階建てで、各住戸の中に階段があります。一戸建ての住宅の壁の一部を共有したもの、と考えるとわかりやすいかもしれません。
このような長屋建てが、旗竿地に適している場合が多くあります。
長屋について知ろう
旗竿地に長屋を建築する場合のメリットやデメリットを見ていきましょう。
共同住宅と比べた長屋のメリット
共同住宅と長屋はどちらも集合住宅の一種ですが、オーナーの立場から見た場合、あるいはそこに住む人から見た場合、長屋には大きなメリットがあります。
旗竿地でも建てられる
都道府県によっては、条例で旗竿地に共同住宅を建築してはいけないと定められていることがあります。
そのような場合でも、重層長屋なら建築可能です。比較的狭い土地や旗竿地などでも立てやすく、規制も比較的緩いため近年急速に数を増やしています。
独立性が高い
長屋には前述の通り、通常の物件のように廊下や階段などの共用部分がありません。
共用部分がないため各住戸の独立性が高く、プライバシーを確保しやすいのが大きなメリットです。個を重視する現代人にとってプライバシーを確保できるというのは大きなメリットであり、2世帯住宅などの場合にも使え、稼働率の底上げが期待できます。
レンタブル比(延床面積に対する貸出面積の比率)が高い
長屋には共用部分がないため、レンタブル比が高くなります。レンタブル比が高くなれば、その分収益もアップします。
管理が楽
長屋には通路部分などの共用部分がないため、清掃など建物の管理が比較的楽です。
特殊建築物に該当しない
建築基準法では、特殊建築物という建築物が定義されています。
具体的には学校、体育館、劇場、展示場、百貨店、ダンスホール、旅館、共同住宅、工場、火葬場などが該当します。
特殊建築物は構造や設備時代が特殊であり、不特定多数の人が利用したり、非常時には人名、財産に被害が出やすく、その分立地条件や構造に厳しい制限があります。
しかし、長屋は共同住宅とは違い特殊建築物に該当しないため、建築基準法の厳しい制限を受けません。
例えば、3階建て以上の共同住宅は原則として、「耐火建築物」にしなければなりません。
耐火建築物とはその名の通り耐火性が高い建築物のことで、通常の建築物よりも耐火性の高い材を使わなければならないなどの制限があります。一方、長屋は特殊建築物ではないので、その制限を受けません。
縦方向の騒音が問題になりづらい
共同住宅では縦方向に違う世帯が済むため、足音などの縦方向の騒音トラブルが発生しがちです。
一方、長屋の場合は平屋でも重層長屋でも縦方向には1つの世帯しか住まわないため、そのようなトラブルは起きません。
長屋のデメリット
このようにメリットが多い長屋ですが、もちろんデメリットもあります。
横方向の騒音が問題になりやすい
共同住宅は基本的に鉄筋コンクリートや鉄骨造で作られるため騒音がそこまで問題となることはありませんが、長屋は原則として木造になるため騒音トラブルが比較的発生しやすいです。
ただ、最近は鉄筋コンクリート造の長屋も増えていますし、そこまで深刻に考える必要はありません。
将来の建て替えや大規模修繕、売却が難しくなる
長屋は感覚的には一戸建てに近いものですが、実際には集合住宅であるため、建て替えや大規模修繕を行う際にはそこに住んでいる人たちから同意を得る必要があります。かと言って売却も難しく、何かと持て余しがちです。
耐火性が低いため、災害時は危険
前述の通り長屋は特殊建築物ではないため、耐火建築物にする必要はありません。
耐火にお金をかけなくていいというのはメリットでもありますが、万が一火災や地震が発生したときはより危険であるともいえます。かと言って耐火建築物にするのでは長屋を選ぶメリットが薄れてしまうのが悩みどころです。
長屋建設の注意点
建築できるかどうか条例をチェック
自己所有の土地に長屋を建てるためには、国が定めた建築基準法などの法律だけではなく、各都道府県や市区町村が定める条例もクリアして設計しなければなりません。条例を独力で調べるのはなかなか手間の折れる作業なので、自治体や建設会社などに相談してみるといいでしょう。
旗竿部分をうまく通路にしよう
旗竿地で最も無駄になりやすいのが竿の部分です。
この部分を通路(アプローチ)としてうまく活用することができれば、住民の満足度もアップし稼働率も上がるはずです。例えば竿の両端に木を植えて森をイメージさせたり、両端に塀を作ってプライベート感をアップさせたりと、活用方法は色々あります。
基本的にトランクルームを運営するのは倉庫業を営む業者で、土地の所有者は彼らに管理を委託することになります。
旗竿地の上に狭小地という、普通に考えれば非常に活用が難しい土地でも経営が可能です。