立地条件により異なる適切な土地活用
現在所有している土地を活用する上で、最も重要となるのが立地条件です。
駐車場経営に適した土地をアパートにするのも、アパート経営に適した土地を駐車場にするのも、どちらも土地を十分に活かしているとはいえません。
駐車場に適した土地には駐車場を、アパートに適した土地にはアパートを作るのが土地活用で成功する最大のコツです。
現時点で土地を持て余しており、有効な土地活用方法などないのではないかと心配されている方もいらっしゃるかと思いますが、そんな中でも相対的に有効な活用方法というのは存在します。
相対的に有効な方法でもなお収益が出ないときは、土地を売却するというのも立派な活用方法の一つです。
現在所有している土地を有効活用したいのならば、立地条件から活用方法を決めていくことをおすすめします。
今回はよく見られる立地条件と、それに適した土地活用法を考えていきたいと思います。
駅などが近いケース
駅から近い土地は何をやってもそれなりに成功しそうに見えますが、やはり向き不向きというのはあります。
駐車場
比較的規模の大きな駅の周辺で始めやすいのが駐車場経営です。
大きな駅の周辺は公共交通の利用者が多いぶん自家用車の利用者が少なく、駐車場のニーズは少ないのでは?と思われるかもしれません。しかし、公共交通と自家用車の両方のニーズが高いため、月極駐車場ではなく、コインパーキングとすることで十分な集客が見込めます。
スマートパーキング・ラボが2016年に三大都市圏(東京都、愛知県、大阪府)在住者を行った調査によれば、開いている駐車場がすぐに見つからなかった事が年1回以上あると回答した人の割合は、三大都市圏の全てで75%を超えていました。
また、月に1回以上と回答した人の割合はいずれの地域でも35%を上回っていました。
都市圏では駐車場不足が続いていることが伺えます。このようなニーズのある地域に駐車場を作るのは戦略としては間違っていません。
オフィスビル
初期投資がある程度かかってしまいますが、オフィスビル経営も適しています。
一般的にオフィスのニーズは利便性も考慮され、住宅のニーズよりも駅近に集中するうえ、テナント料も高めに設定しやすいので、駅から近い土地との相性は良好です。ただし、アパートやマンション経営と比べて景気に左右されやすいなどの欠点もあるため注意が必要です。
アパート、マンション
土地活用としては王道のアパート・マンション経営のような賃貸住宅経営も悪くありません。都市部でなければ成功しづらい駐車場経営や賃貸ビル経営と比べて、アパートやマンションは地方でもある程度のニーズが見込めるのが長所です。
何分までを駅から近いと定義するかは人によって異なるかと思いますが、不動産情報サイト事業者連絡協議会のアンケート調査によれば、徒歩圏内を10分以内と考える人が最も多く、平均は12.6分でした。このことを考慮すると、駅から10分以内ならば駅から近い(住んでもいい)といえるのではないでしょうか。
利回りは少し下がりますが、賃貸併用住宅として自分が住みながら賃貸収入を得るという選択肢もあります。
駅から遠いケース
駅から遠い土地は駅から近い土地と比べるとどうしても選択肢は狭まってしまいますが、きちんと需要にあった施設を提供すれば十分収益性は確保できます。
基本的には、自動車でアクセスすることを前提とした施設を作るべきです。
駅から遠い土地でも、駐車場経営はある程度ニーズがあります。駅から遠い土地は自家用車への依存率が高いためです。
ただし、駅から遠いところは土地が余り気味で、すでに十分に駐車場が確保されている所も多いので、事前の調査は必要不可欠になります。
トランクルーム
また、最近注目を集めているのがトランクルームです。
トランクルームとは小さな貸し倉庫のようなもので、普段は使用しないけれど捨てたくはないもの(思い出の品、個人のコレクションなど)を保管するためのスペースとして人気があります。
トランクルームには普段は使わないものを保管するうえ、荷物を運ぶのに自動車を利用する人が多いため、駅から離れていることがほとんどハンデになりません。アパートやマンションなどの賃貸経営と比べると初期投資額が少ないのもポイントです。
認知度が低いため不安に感じられるかもしれませんが、トランクルーム市場はここ5年ほど毎年約10%市場規模が拡大しており(株式会社キュラーズ調べ)、今がまさに成長期であるといえます。
キュラーズの調査によれば、今後もこの成長水準はしばらく維持される見込みで、2020年には740億円ほどの市場規模になる見通しです。
レストランやコンビニ
レストランや大きな駐車場つきのコンビニなどの商業施設も悪くありません。駅から遠くても幹線道路沿いなどで人通りが多く、なおかつそれに対して商業施設が不足している場合は十分検討する価値があります。
ロードサイド店は昔ほど稼げない印象を持っている方も多いかと思いますが、成功事例も多数あります。
戸建て賃貸
意外と人気があるのが賃貸戸建住宅です。
住宅経営と聞くとアパートやマンションなどの経営を思い浮かべるかと思いますが、実は賃貸戸建住宅のニーズは意外と旺盛です。プライバシーや騒音に悩まされずに住宅地にある一戸建てで暮らしたいという人はたくさんいます。
一方で、一戸建てを買うほどお金がない、あるいはリスクを取りたくないという人もたくさんいます。そんな人達のニーズを埋めるのが賃貸戸建住宅です。
賃貸戸建住宅に住みたがる世帯の多くはファミリー世帯です。内閣府の調査によれば、ファミリー世帯は単身世帯よりも所得が高く、自動車で受けられる恩恵も大きいぶん、自動車の所有率が高く(世帯主が30~50代の世帯の場合、ファミリー世帯の乗用車保有率は88%、単身世帯は62%)、駅から遠いのもあまりハンデになりません。
郊外エリア
郊外は駅から近いところと比べると住居ニーズが相対的に多いので、賃貸アパートや賃貸マンションの経営などを行うのが基本的な戦術となります。
郊外は都心に比べると家賃設定が低くなりがちですが、それ以上に土地が割安なため、表面利回りは高くなることが多いです。その分入居率は都心の物件と比べると低迷しやすいため、適切な入居者募集や管理などが求められます。
郊外であっても、高速道路のインターチェンジ付近など都心へのアクセスが良好な場合は、物流施設として活用するという手もあります。かなり大きな敷地が必要になりますが、その分成功したときの利益は大きいです。
サービス付き高齢者向け住宅
環境がいい郊外の場合は、サービス付き高齢者向け住宅も有力な選択肢となります。
サービス付き高齢者向け住宅とは高齢者向けの賃貸住宅です。一般的なマンションやアパートと違い、入居者は食事提供や訪問介護などを受けることができますが、有料老人ホームなどの介護施設とは違い、元気な人でも入れます。
高齢者住宅の住民は高齢者ばかりで遠出することも殆どないため、立地が郊外であることはほとんど不利には働きません。むしろ環境が良いと好まれる可能性のほうが高いでしょう。場合によっては自治体から補助金が出ることもあり、地価も安いため建築コストを抑えることができます。
また、サービス付き高齢者向け住宅の住民は一度入居するとそこで暮らすのが不可能にならない限り(重度の要介護状態にならない限り)一生そこに住み続けてくれる事がほとんどなので、入居率が維持しやすいのも大きなメリットです。
一般社団法人すまいづくりまちづくりセンター連合会によれば、サ高住の2015年9月時点での棟数は5734棟で、前年比16%と急速な勢いで増えています。
地形が悪い
地形が悪いとは、正方形やそれに近い長方形でない土地のことです。
例えば三角形、L字型、凸字型、極端に細長い長方形の土地は地形が悪いといえるでしょう。地形が悪い土地は面積が大きくても活用できる部分が少なく、デッドスペースが多くなるので使い勝手は悪いですし、土地の評価も低くなりがちです。
ただ、そんな土地でももちろん活用方法はあります。
トランクルーム
地形が悪い土地を最も有効に活用できるのはトランクルームです。
トランクルームは人が住むわけではないため、地形が悪いことがほとんどハンデになりません。コンテナを置くタイプならば、面積がそれほど大きくなくても問題なく行うことができます。
コインパーキング
また、都市部の場合はコインパーキングとして活用するのもいいでしょう。
コインパーキングは自動車を止めるだけの場所であり、上に建物を置くわけでもないため、やはり地形が悪いことはほとんどハンデになりません。
ゴルフ練習場
地形が悪くても面積が非常に大きい場合は、ゴルフ練習場として活用することも可能です。
すでに広い土地を持っている場合は追加費用が余りかかりません。ただ、ゴルフ人口は1990年台をピークに減少傾向にあり、それに伴いゴルフ場の数も減少しているため、成長産業とはいえません(ゴルフ経営研究所調査より)。
自動販売機
地形が悪く更に面積も非常に小さいという場合は、自動販売機を設置するのが良いでしょう。
飲料水メーカーと自動販売機設置の契約を結べば、自動販売機は無償で提供してもらえますし、飲料ももらえます。その代わり賃料は売上の数%程度にしかならず、電気代を差し引くとほとんど利益が出ません。
自動販売機を購入し、飲料なども自分で選択して提供するという方法もあります。自分自身で商品を工夫することができ、価格設定も自分で決められるという長所がありますが、反面初期投資額が多くなるのでリスクも高くなります。
現在日本には約215万台の自動販売機が設置されており、1年あたりの平均販売金額は88万3000円です。また、自動販売機で最も売れるのは缶コーヒーで、全体の50%以上を占めています。以下炭酸飲料が約20%、お茶が15%で続いています(一般社団法人日本自動販売機工業会調査より)。
空き家ばかりの地域
空き家が多い地域ではマンションやアパートなどの経営がうまくいかないのかというと、必ずしもそうとも言えません。
長年ろくに管理がされていない空き家には住みたくないけれど、キチンと管理されているマンションやアパートならば住みたいという人が少なからず存在するからです。
しかし、空き家が多い地域はイメージも良くないですし、無理やり活用してもうまくいかないケースも多いです。その場合は無理せず、土地を売却してしまったほうがいいかもしれません。
土地を売却してしまえば相続税や固定資産税や都市計画税などはかからなくなりますし、それで得たお金を使って別の投資をすることも可能になります。空き家ばかりの地域の土地を高く売るというのはこれまた難しい話ですが、優秀な専門家や仲介業者を介せばそれなりの価格で売れるはずです。
ロードサイド
ロードサイドは他の土地と比べて交通量が多く騒音や振動などの問題があるため、アパートやマンション経営には向いていません。反面、人通りは多いため、短時間立ち寄る商業施設(ロードサイド店舗)には適しています。
ロードサイド店舗と一口に言っても、コンビニやドラッグストア、ファストフードといった比較的小規模なものから、家電量販店やホテル、シネコンや副業商業施設など大規模な者まで色々あります。
いずれにせよ車での客がメインになるため駐車場スペースは十分に取る必要があります。交通量調査などの資料をもとに、適切なスペースを確保しましょう。
リースバックと事業用定期借地
また、ロードサイド店舗経営は大きくリースバック(一括借上げ)と事業用定期借地の2つがあります。
リースバックの場合は建物をオーナー側が用意し、土地の建物の両方を店舗事業者が一括で借り上げます。事業用定期借地の場合は、オーナーが土地のみを事業者に貸出、事業者は自分で建物を立てます。前者は建物をオーナー側が用意する為ハイリスクですが、賃料もその分高くなりやすいです。
ロードサイド店舗経営は全体的に収益性が高いものの、店舗の経営状況に賃料が左右されやすいなど、不安定な一面もあります。また、近隣に他の商業施設(特に商店街など)がある場合は、そちらとの兼ね合いも配慮しなければなりません。
山林や農地
山林や農地が多くあるような地域は人の絶対数が少ないので、マンションやアパート経営などで稼ぐのは非常に難しいと言わざるを得ません。
駐車場やトランクルームなども難しいでしょう。林業は非常に手間がかかるので、山林や農地に土地を持っているだけの素人が行うのは非常に難しいです。
太陽光発電
山林や農地を活用できるほぼ唯一の方法は、太陽光発電です。
太陽光発電は十分な太陽光が必要になるため、むしろ周囲に太陽光を遮る建物がない山林や農地でこそやるべきものといえます。
もちろん、設置の際には十分に方角を選び、また場合によっては伐採なども必要になることがあります。そもそも晴れの日が少ない地域では採算が取れないこともあるため、設置には十分な検討が必要です。