今回の記事では、アパートやマンション経営より収益を生み出しやすいコンビニ経営について、詳しく解説していきます。
目次
コンビニ土地活用の種類
コンビニ土地活用の方法は2つあります。
- 1つ目が土地に事業用定期借地権を設定した、事業用定期借地方式(土地だけを貸す)
- 2つ目がリースバック方式(土地の上に建物を建てて両方貸す)
で、それぞれリスクやメリットなどが異なります。
土地だけを貸す
土地だけを貸す契約を事業用定期借地方式と言います。
この場合、建物は店舗事業者が建てることになります。
オーナーはただ土地を貸すだけで、毎月店舗事業者から賃料を得ることが出来ます。
事業用低地借地方式の特徴としては、以下の様なものが挙げられます。
初期費用がほとんどかからない
事業用定期借地方式の最大のメリットは、建物を立てる必要が無いため初期費用がほとんどかからないことです。そのためローンを組む必要もなく、低リスクな土地活用が可能です。
一方、建物をオーナー自らが建設するリースバック形式はどうしてもそれなりの初期費用が必要になります。
ローンを組んでまで土地活用はしたくない、できるだけ危険な橋は渡りたくないという場合は、事業用低地借地方式を選んだほうがいいでしょう。
相続税評価額が減免される
事業用定期借地方式の場合、建物所有者はオーナーではなく店舗事業者なので、相続の対象は土地だけになります。
事業用定期借地として土地を貸し出している場合、残存期間に応じて評価額が更地よりも減免されるというメリットがあります。残存期間と減額割合は以下のとおりです。
- 15年超:20%
- 10年超15年以下:15%
- 5年超10年以下:10%
- 5年以下:5%
土地の実勢価格が高いところならばそれだけ多くの評価額減免が受けられるため、相続の際に有利になります。
収益性はリースバック方式と比べると低め
事業用定期借地方式ではただ土地を貸すだけですので、収益性はどうしても低くなりがちです。しかし、賃料は安定しやすいためその分低リスクであるともいえます。
コンビニ用建物を建てて貸す
土地の上に建物を建てて、両方を貸す契約をリースバック方式と言います。
この場合、建物はオーナーが建てることになります。内装にかかる費用は原則として店舗事業者側が持つことになりますが、場合によってはオーナーが負担しなければならないこともあります。リースバック契約の特徴としては、以下の様なものが挙げられます。
初期費用がかかるが、建設協力金が受け取れることも
建物を建てるに当たっては当然、費用がかかります。その費用を自己資金で用意できない場合は、基本的には銀行などでローンを組まなければなりません。
しかし、最近は店舗事業者側から建設協力金が出る場合も多く、その場合は自己資金を用意せずとも建物が建てられます。
建設協力金とは店舗事業者がオーナーに建物を立ててもらうために捻出するお金で、返還義務がありますが、無利息なのが大きな特徴です。
事業開始後は、賃料と契約期間で割り出された金額を毎月返済していきます。
資産が増えると減価償却費を毎年計上しなければならず、会計に手間がかかるというデメリットもあります。このような面倒を避けたい店舗事業者は、無利息でお金を貸してでもリースバック方式を結ぼうとするのです。
相続税評価額が減免される
リースバック方式では、土地と建物の両方を相続することになります。
建物は建設した時点ですぐに中古となるため、相続税評価額は実勢価格の70%ぐらいになります。そのため、同じ額の財産を現金で相続するよりも相続税は低くなります。
一方、土地に関しては「貸家貸付地」として扱われます。
これは自分の所有する土地の上に自分の所有する建物を立てており、なおかつその建物を貸している場合の土地のことです。この場合、土地は借家人が利用することになるため、評価額は低くなります。
収益性は事業用定期借地方式よりも高め
リースバック形式では土地と建物の両方を自己所有することになるため、毎月受け取れる賃料は事業用定期借地方式よりも高くなります。その分借入額が多くなりハイリスクな一面もありますが、大きく稼ぎたいならばこちらの方がいいでしょう。
コンビニ土地活用のメリットとデメリット
マンション経営やアパート経営など、数ある土地活用の中でも、コンビニ土地活用には以下のようなメリットがあります。
コンビニ土地活用のメリット
収益性が高い
コンビニ土地活用は一般的に賃料が高くなりやすいとされています。
コンビニは住宅と違いそれ自体が収益を生む施設であるため、その分高く賃料を設定することができるからです。具体的にどれくらい稼げるかは土地の条件などにも左右されますが、高いところでは単位面積あたりの賃料が住居の1.5倍以上になることも珍しくありません。
郊外でも比較的成功しやすい
幹線道路沿いの郊外の土地などは住居として活用するのには向いていませんが、商圏人口次第では、コンビニとして活用するには最適です。
コンビニはなんとなく立ち寄る人が多いため、交通量は多いに越したことはないからです。特にその周辺にコンビニが少ない場合は収益を独り占めすることができ、その分賃料も高くなります。
土地があまり広くなくても行える
ホームセンターや複合商業施設などの事業用施設は賃料が高いというメリットがある反面、非常に広い土地が必要になるというデメリットもあります。
一方、コンビニは賃料が高いにも関わらず、余り広くない土地でも問題なく展開できるというメリットがあります。
契約期間が長い
コンビニの契約期間は事業用定期借地方式、リースバック方式ともに10年~20年が一般的です。そのため、売上や収益性が安定している地域ならば、オーナーは長期的に安定した収益を得ることが出来ます。
コンビニ土地活用のデメリット
コンビニ土地活用は収益性が高い反面、様々なデメリットもあります。
収益が上がりづらい土地が多い
コンビニは現時点でもかなりの数が出店されています。
すでにコンビニがたくさんある地域に出店しても、顧客の奪い合いに発展して双方が疲弊するだけで終わることが多いです。かといってコンビニが少ない地域は需要そのものが少ないのでやはり収益を上げるのは難しくなります。
中途解約される可能性がある
コンビニは入れ替わりが激しいため、契約期間が長くても店舗事業者側に途中解約を求められる可能性が可能性が高いです。
中途解約は原則として双方の合意がなければできませんが、どんなときでも絶対に中途解約を認めないと店舗事業者側にとって大きな不利益になります。
そのため、通常は契約前に話し合って中途解約時のペナルティ(違約金など)を定めます。中途解約ペナルティ条項の詳細を事前に詰めておかないと、あとで泣きを見ることになります。
建設協力金の取得で贈与税がかかることがある
リースバック方式で、なおかつ建設協力金を受け取って建物を建てて店舗事業者が撤退する場合、税金が増えることがあります。
中途解約をした場合、建設協力金はその時点で一括返済するか、もしくは店舗事業者側が債権放棄するかどちらかになります。大半は店舗事業者側が持ちかけた話なので債権放棄となりますが、ここに落とし穴があります。
例えば、1500万円ほど残債が残った状態で店舗事業者が撤退を決めたとします。店舗事業者が債権を放棄した場合、オーナーは1500万円を得たことになります。このお金には当然贈与税がかかります。この場合は、概ね350万円の税金ほど取られます。
贈与額が増えれば増えるほど、これだけの纏まったお金を用意するのは簡単ではありません。
残された建物を借りたがる別の店舗事業者がすぐに現れてくれればいいのですが、中途解約したがるような立地の店舗を借りたがる店舗事業者はなかなか現れないでしょう。建設協力金で建物が建てられるからと言って、安易に契約をしてはいけません。
コンビニとマンション(アパート)どちらを選ぶべき?
土地活用の王道といえばアパート・マンション経営です。
コンビニとアパート・マンションではどちらがいいか、という問いに対する答えを出すのは非常に難しいです。どちらがいいかで迷ったときは、以下の基準を考えてみてください。
基準1:収益性と安定性、どちらを優先させたいか
収益性とは簡単に言えば投資金額に対する利益の多さ、要するに利回りの高さのことです。一方、安定性とは、毎年の利回りが一定になりやすく、容易には利回りが下がらない性質のことです。
コンビニはそれ自体が利益を生むため、高めの賃料を設定しやすく、収益性では勝っています。住宅は単に住むための場所でそこから利益が生まれることはないため、どうしても賃料は低くなりがちです。
しかし、アパートやマンションは複数の世帯を入れられるので、1世帯が引っ越してしまってもいきなり賃料が0になってしまうことはありません。安定性においてはアパート・マンションのほうが勝っていると言えるでしょう。
収益性を優先したい場合はコンビニ、安定性を優先させたい場合はアパート・マンションを選ぶのが基本です。
基準2:立地はコンビニ向きか、アパート・マンション向きか
コンビニに向いているのはズバリ人通りが多い土地です。人通りが多ければ多いほど、コンビニを利用する人の数も増えるからです。そのため、通常コンビニは人通りが多い幹線道路沿いや駅の近く、あるいは大規模なマンションの近隣などに建てられることが多いです。
一戸建てた多い住宅街の中に建てられることはあまりありません(そもそも用途地域の制限により建てられないケースも多いです)。
逆にアパート・マンションは人通りはあまり多くないほうがいいでしょう。
人通りが多すぎると騒音トラブルなどに発展する可能性があります。特に幹線道路沿いは避けるべきです。静かな住宅街の中に建てるのが最も確実でしょう。
また、面積や土地の形状にも注意が必要です。コンビニは店舗事業者によっては最低面積が定められていることがあります。
例えば、ローソンの場合は郊外型店舗は原則として敷地面積120坪(約397m2)、店舗面積は60坪(約199m2)以上なければ出店できないという制限があります。もちろん、それとは別に各種法令条の規制も受けます。
土地の形状は必ずしも正方形や長方形である必要はありませんが、道路接道長さが大きい長方形の方が自動車で入りやすくていいでしょう。高い建物が周りになければ遠くから走ってきた車が認識しやすくなるのでベストです。
アパート・マンションは小規模なものから大規模なものまで様々ですが、規模を大きくしたほうが経営効率は高まることを考えると、やはり余り小さな土地は避けたいものです。
敷地形状は敷地内に駐車場を併設しないのならば、コンビニよりは条件がゆるくなります。いわゆる旗竿地やうなぎの寝床のような細長い土地でも十分成功できる可能性はあります。
基準3:経営にどこまで携わりたいか
コンビニは事業用定期借地方式でもリースバック方式でも、経営に関わることはありません。経営を行うのはあくまでも店舗事業者側です。経営に携わらなくてもいいのは大きなメリットでもありますが、自ら収益性を高める工夫ができず、独創性に欠けるともいえます。
一方、アパートやマンションは管理は業者に任せますが、経営自体は自分で行います。
例えば建物が経年劣化してきた場合にどのようにリフォームするとか、どのように入居者を募集するかとか、そのようなことは全て自分で決めます。コンビニ経営よりも手間はかかりますが、工夫次第で収益性を高めることができます。
企業が提供するプランはどういうものがある?
セブンイレブンやローソンなどの大手のコンビニは、土地のオーナーに対して様々な土地活用プランを提供しています。実際に見ていきましょう。
ローソンの土地活用プラン
ローソンは全国に店舗を展開しているコンビニです。店舗数は2016年9月時点で約1万2500軒でセブンイレブンについで2位、人口比で見た場合は関西、中国、四国、北東北に多くの店舗を展開しています。
ローソンは様々な出店形態を用意しており、形態は大きく
- 郊外型店舗・路面店舗
- 施設内店舗
- 施設内小型店舗
- 複合型店舗
の4つに分けることが出来ます。
郊外型店舗
郊外型店舗は、その名の通り郊外の住宅地やロードサイドなどに出店する形態です。
契約形態 | 事業用定期借地方式(借地)、リースバック形式(建て貸し)など、賃貸借契約 |
契約期間 | 15年以上 |
敷地面積 | 敷地面積120坪以上、間口は20m以上 |
店舗面積 | 60坪以上、間口は19.8m以上 |
営業時間 | 原則24時間年中無休 |
その他 | 第一種低層住居専用地域、工業専用地域には原則出店不可 |
施設内店舗
施設内店舗とは、路面に面した施設の一部を貸し出す方式です。
契約形態 | 賃貸借契約 |
契約期間 | 10年以上 |
敷地面積 | 有効面積50坪以上、間口は20m以上 |
店舗面積 | 40坪~60坪前後 |
営業時間 | 原則年中無休、7時~23時(休館日対応) |
施設内小型店舗
施設内小型店舗とは、病院や工場、オフィスなどの施設の一部を貸し出す方式です。
契約形態 | 賃貸借契約、使用貸借 |
契約期間 | 最低5年以上 |
敷地面積 | 20坪~30坪程度 |
店舗面積 | 20坪~30坪程度 |
営業時間 | 施設に準ずる |
複合型店舗
複合型店舗とは、ガソリンスタンドなどの異業種とのコラボレーションによる出店です。
契約形態 | 事業用定期借地方式(借地)、リースバック形式(建て貸し)など、賃貸借契約 |
契約期間 | 15年以上 |
敷地面積 | 500坪以上、間口は40m以上 |
店舗面積 | 60坪 |
営業時間 | 24時間年中無休 |
その他 | 第一種低層住居専用地域、工業専用地域には原則出店不可 |
ローソンならではのメリット
ローソンで土地活用を始めるメリットには、以下の様なものがあります。
- リースバック形式(建て貸し)を選んだ場合、建設協力金を受け取ることが出来る。
- 建物や土地などを広く守ることができる、「ローソン店舗専用損害保険」に加入できる。希望する場合はそれに加えて、地震保険にも加入OK。
- 地域やロケーションに合わせた店舗デザイン等の提案が受けられる
セブンイレブンの土地活用プラン
セブンイレブンは全国的に展開しているコンビニの一つです。店舗数は2016年9月時点で約1万9000軒で、2位のローソンを6000店舗以上離してのトップとなっています。人口比で見た場合、関東、南東北、甲信越、九州地方に多くの店舗を出店しています。ローソンが多いところではセブンイレブンが少なく、セブンイレブンが多いところではローソンが少ないという傾向があります。
セブンイレブンもローソン同様に、様々な出店形態を用意しています。形態は、
- ビルイン
- 建て貸し
- 土地賃貸借
- 買い取り
の4つに分けられます。
ビルイン
ビルインとは、すでに所有しているビルの一部をセブンイレブンに貸す方式です。新しくビルを建てる際には、予めプランを考えておくことも可能です。
契約形態 | 普通借家契約 |
賃貸借期間 | 店舗開店日から20年を基本とする |
店舗面積 | 50~60坪程度 |
店舗間口 | 9m以上 |
天井高さ | 2.7m(仕上げ) |
敷金 | ビル所有者とセブン-イレブンの協議の上、必要に応じ無利子で預託する |
賃料 | 客観的データ、資料をもとに決定 |
賃料改定 | 原則として3ヶ月に1回 |
中途解約 | セブンイレブン側が6ヶ月前の予告をもって中途解約をできるものとする。 |
契約終了時 | ビル所有者は敷金を返還し、セブンイレブンは自身で整備した給排水や空調などを撤去し明け渡す。 |
建て貸し
建て貸しとはいわゆるリースバック方式のことです。オーナーは建物を上に建てて、土地と建物の両方をセブンイレブンに貸します。
契約形態 | 普通借家契約 |
賃貸借期間 | 店舗開店日から20年を基本とする |
土地面積 | マーケットの規模によって面積が変わる |
店舗面積 | 60坪程度 |
敷金 | ビル所有者とセブンイレブンの協議の上、必要に応じ無利子で預託する |
賃料 | 客観的データ、資料をもとに決定 |
賃料改定 | 原則として3ヶ月に1回 |
中途解約 | セブンイレブン側が6ヶ月前の予告をもって中途解約をできるものとする。 |
契約終了時 | ビル所有者は敷金を返還し、セブンイレブンは自身で整備した給排水や空調などを撤去し明け渡す。 |
土地賃貸借
土地賃貸借とは、いわゆる事業用定期借地方式のことです。土地を貸し出し、セブンイレブン側に建物を建ててもらいます。
契約形態 | 借地契約 |
賃貸借期間 | 土地引渡日から30年を基本とする |
土地面積 | マーケットの規模によって面積が変わる |
敷金 | ビル所有者とセブン-イレブンの協議の上、必要に応じ無利子で預託する |
賃料 | 客観的データ、資料をもとに決定 |
賃料改定 | 原則として3ヶ月に1回 |
中途解約 | セブンイレブン側が6ヶ月前の予告をもって中途解約をできるものとする。 |
契約終了時 | ビル所有者は敷金を返還し、セブンイレブンは自身で工事した部分を撤去し明け渡す。 |
買い取り
買い取りとは、土地をセブンイレブンに買い取ってもらう方式のことです。原則として、普通に土地を売るのと同じです。
セブンイレブンならではのメリット
セブンイレブンで土地活用を始めるメリットには、以下のようなものがあります。
- 開発担当者のカウンセリングが受けられる
- 1日あたりの平均客数や平均売上が他の事業者と比べて多く、収益が安定しやすい
ミニストップの土地活用プラン
ミニストップは北は青森から南は大分まで、ほぼ全国的に展開しているコンビニの一つです。2016年9月時点での店舗数は約2200軒でセブンイレブン、ローソン、ファミリーマート、サークルKサンクスについで第5位です。人口比で見た場合、南東北、関東、中部地方南部に多く出店しています。日本海側にはほとんど店舗がありません。
ミニストップも様々な出店形態を用意しています。形態は、
- 建物賃貸借契約
- 店舗賃貸借契約
- 事業用借地契約
上記の3つがあります。
建物賃貸借契約
いわゆるリースバック形式です。空き地などの上にオーナーが店舗を建設し、その土地と建物をミニストップに貸し出します。建設費用は建設協力金として受け取ります。
店舗賃貸借契約
ビルやマンション、事務所などの開いているスペース(1階部分)をミニストップに貸し出します。
事業用借地契約
いわゆる事業用定期借地方式のことです。空き地などを貸し出し、ミニストップ側が店舗を建設します。
ミニストップならではのメリット
ミニストップで土地活用を始めるメリットには、以下のようなものがあります。
- 絶対数も少なく、また限られた地域に集中して店舗を出店することが殆どないためミニストップ同士での競合が生まれにくい
- 競合が生まれなければお客さんを独占しやすく、利益が上がるので中途解約のリスクが小さくなる。
実際に各プランを使って安定した収益を得ているオーナーも少なくありません。一方で失敗するケースも少なくないため、契約を結ぶ前には本部に確認し、各社のプランを十分比較検討する必要があります。