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太陽光発電とは
太陽光発電とは、太陽の光をソーラーパネルで電気に変換し、利用したり販売したりするシステム。10年もしくは20年間にわたり国が定めた価格で電力会社に買ってもらえる「固定価格買取制度」が始まって以来、土地活用策の一つとして脚光を浴びている事業形態です。
買取価格は毎年低下を続けていますが、これはソーラーパネルの価格低下が続いているため。つまり“おおむね10年で投資を回収できる”ことが買取価格の目安となっているため、パネルが安くなって初期費用が下がった分だけ、買取価格も引き下げられているのです。
このため現在でも、5~10%程度の利回りが実現できると言われており、資材置き場ぐらいにしか活用できなかったような土地の有効活用策として注目を集めています。
①太陽光発電経営のメリット
固定価格買取制度
どんな事業でも、競合の出現に伴う価格競争により経営が悪化するリスクが存在します。賃貸経営においても近くに新築の賃貸住宅が建築されれば、入居者の争奪戦となり家賃低下を招く危険性は避けられません。ビル経営でも駐車場経営でも同じリスクは必ず付きまといます。
しかし、太陽光発電の場合は契約した価格で10年もしくは20年間買い取ることが約束されるので価格競争の心配はありません。
ただし、太陽光発電事業者が急増した結果、電力需要によっては電力会社が電気を買ってくれなかったり、制限がかけられたりする場合もあるので、事前に契約内容をよく確認する必要があります。
メンテナンスがラク
太陽光発電システムはシンプルな仕組みのため、故障が少なくメンテナンスがラクなのも魅力です。人を相手にするわけではないので入居者や利用者とのトラブルもありません。
発電効率を維持するために、パネルの清掃や除草などの必要はありますが、他の事業に比べればランニングコストはあまりかからないのが魅力です。
条件の悪い土地でもOK
日照さえ確保されれば発電できるので、郊外や農山村の土地でも事業化可能です。
②太陽光発電経営の注意点
近隣への配慮
近隣に住宅がある場合、パネルの反射光が近隣トラブルになる場合があるので、反射光対策を忘れてはいけません。また、日照を確保するために周囲の樹木を伐採したり、造成したりする場合は、土砂崩れや川を汚す恐れもあるので十分な配慮が必要です。
10年・20年後の変化予測
太陽光発電システムの寿命は数十年とも言われ、投資を回収してからいかに長く経営を続けるかが事業としてのポイントになります。
このため、10年後・20年後も日照を確保できる立地かどうかチェックしておくことが必要です。樹木一本が茂っただけでも発電効率が大きく低下する場合があるので、南面が自分の土地でない場合は特に注意が必要です。
20年程度の活用が前提
太陽光発電事業の初期投資回収期間は約10年。つまり、10年でトントン、利益が出るのはそれ以降となるので、15年~20年程度は太陽光発電経営を継続しないと旨みがありません。
10年程度で別の事業に転用する可能性がある場合は、他の方法を探った方が賢明でしょう。
太陽光発電に適した土地の条件
では、どのような土地の場合、太陽光発電経営を検討すべきか考えてみましょう。
①太陽光発電経営が向かない土地
太陽光発電経営は、あまり場所を選ぶことのない土地活用策ですが、下記のような条件の土地では、投資費用の回収に時間がかかる恐れがあるため、慎重に検討する必要があります。
- 雪が積もって、なかなか溶けない(発電量が大幅に低下する)
- 周囲に日光を遮るものがある(樹木、建物など)
- 地盤が悪い(設置のために地盤改良工事が必要となり初期費用がかさむ)
- 敷地内に高低差がある(そのままでは設置できないので造成などの費用がかさむ)
- 水害や土砂崩れの恐れがある(システムが失われる恐れがある)
- 電柱が近くにない(電柱の設置費用は自前になるので、送電網から遠いとコストアップになる)
②地目別の注意点
また、所有する土地の地目によっては届け出などが必要になる場合があるのでチェックしておきましょう。
農地
転用の許可が必要です。転用の許可が得られなければ、太陽光発電経営はできません。また、許可が得られても田んぼだった場合などは地盤改良が必要になるケースが多いので注意が必要です。
山林
樹木があれば伐採が必要なので、届け出が必要です。1ha以上の規模で造成をする場合は開発許可が必要になります。
雑種地・原野
特に注意点はないものの、ソーラーパネルの高架台固定のために地盤改良が必要になる場合があります。
宅地
住宅が建っていたのなら地盤が良く、電柱も近くに来ているので問題は少ないでしょう。ただし、周囲に住宅が迫っている場合は日照が遮られる心配も。また、パネルの反射にも配慮が必要です。
太陽光発電による土地活用策の具体例
所有する土地が太陽光発電に向いている場合、これを利用した土地活用策にはいくつかの方法があります。代表的な2つの方法を紹介しましょう。
①野立て太陽光発電
野立て太陽光発電とは、地面に高架台を設置してその上にソーラーパネルを並べる形態の発電事業。住宅の屋根に設置する場合は小さなシステムしか乗せられませんが、野立てなら、10kw以上のシステムも容易に設置できます。
10Kw未満では固定価格買取の期間は10年ですが、10Kwを超えると20年間になるので、より大きな事業収益が見込まれます。
規模が大きくなれば、当然それなりの初期費用が発生しますが、建物を建築する場合よりははるかに負担は小さく、7~8年で回収できる事例も多いようです。
野立て太陽光発電の収支事例
- 初期費用:1400万円(システム容量49.92kw)
- 年間発電量:67,823kw
- 年間売電価格:1,757,973円(売電単価25.92円)
- 利回り:約12%
- 初期投資回収期間:7.96年
太陽光発電事業者に土地を貸し出し、地代収入だけを得る方法ももちろんありますが、リスクがない代わり収入は非常に限られます。50kw程度のシステムで1000万円台の投資で済むのであれば、自己運用に乗り出す価値は十分あると言えるでしょう。
②アパート・マンションでの太陽光発電
所有する土地がアパ―ト・マンションに適した土地の場合は、その屋根や屋上に太陽光発電システムを設置して家賃と売電のダブルインカムを狙う方法もあります。
野立ての場合、地盤改良や高架台設置費用など、それなりの初期費用かかりますが、屋根や屋上を利用することで初期費用の圧縮が可能です。また、野立てよりも高い位置に設置されるため、日照の条件も地上よりも良くなります。
10kw以上の大規模なシステム設置が可能な場合は、発電したすべての電気を売電可能です(しかも20年間の固定価格買取)。10kw未満の場合は、アパートの共有部分の電源に使うことで余った分をそっくり売電できます(余剰買取制度)。売電収益が高く、施工費用も抑えられるので、このパターンを選ぶオーナーさんが多くなっています。
太陽光発電経営部分だけでも10%オーバーの収益を出している事例が多く、使っていなかった屋根や屋上を有効活用する方法として、おすすめの方法です。
他の土地活用策との比較
太陽光発電事業が可能な土地では、他にもいくつかの選択肢が考えられますが、どんな違いがあるか見てみましょう。
リスク | 手間 | コスト | 収益性 | |
太陽光 | 〇 | ◎ | △ | △ |
資材置場 | △ | ◎ | ◎ | × |
駐車場 | △ | ◎ | 〇 | △ |
賃貸経営 | × | × | × | ◎ |
資材置き場
生活インフラが無く、アクセスも良くない場所では、資材置き場ぐらいしか活用方法のない土地もあります。
しかし、資材置き場を探している業者とうまくマッチングできなければ、空き地のままになってしまいます。また、地代収入もそれほど期待はできません。
これに対し、太陽発電経営なら借り手を見つける必要もなく、確実に安定収入が得られるのは大きなメリットと言えます。
駐車場
市街化調整区域などでは建物の建設が認められないので、駐車場ぐらいにしか利用できない土地もありました。
都市部のよほど恵まれた立地でなければ、駐車場で高い収益性を実現するのは困難ですが、太陽光発電事業なら高い収益性が見込まれます。太陽光発電なら市街化調整区域内でも一定のルールをクリアすれば設置可能なのです。
ただし、駐車場が成り立つ場所は都市部であるため、太陽光発電事業の場合は周辺住民とのトラブルも懸念されます。また、駐車場の場合はすぐにビルやマンションへの転用ができるのに対し、太陽光発電経営では10年ないし20年以上の長期運用が前提になるので、需要の多い土地では駐車場にしておいた方が良い場合もあります。
賃貸住宅
賃貸住宅としての活用が可能な土地なら、野立てではなくアパート・マンションの屋根や屋上を活用した太陽光発電経営を検討すべきです。家賃に加えて売電収益がプラスされるうえ、野立ての場合懸念される周辺住民とのトラブルも軽減できると思われます。
立地条件が厳しく、資材置き場や借地ぐらいにしか利用できなかった土地でも、太陽光発電経営なら比較的手軽な投資で大きな収益を手にすることができます。より積極的な土地活用方法として検討したい方法の一つに間違いありません。
ただし、固定価格買取制度の金額や制度は、年々変化しています。現行の制度がいつまで続くかは不透明で「あの時始めておけば…」と後悔しないよう、早めに情報を収集するなどアクションを起こすことが大切です。ただし、様々な業者が入り乱れているのも事実で、信頼できる業者をしっかり目利きすることも忘れてはならないポイントです。