狭小地とは
一般に20坪以下の土地を狭小地と呼びます。
単に狭いだけでなく、三角形や旗竿地など、変形地である場合が多く、建物を建てにくいことから周辺の相場よりも安く取引される事が多い土地でもあります。
地主さんにしてみれば、坪単価が安い上に狭いわけですから、売却しても売却益には限度があり、しかも活用しなければ固定資産税などの保有コストだけが出ていく“厄介な土地”と考えがち。
しかし、視点を変えれば面白い可能性を秘めた土地でもあるのです。
まずは、狭小地のメリットとデメリットについて押さえておきましょう。
狭小地のメリット・デメリット

メリット
狭小地は案外人気
周辺の相場よりも地価が安価であることは、購入者にとっては大きな魅力です。
狭さを工夫によって克服すれば、限られた予算でも人気の街にマイホームを持てるということで、積極的に狭小地を探す方も少なくありません。実際10坪、15坪の土地に建つ「狭小住宅」は数多く存在し、若いファミリーなどの注目を集めています。
住宅以外でも業種によっては店舗としての活用も可能なので
- ?立地環境が良く
- 建物の建築が可能で
- ?建ぺい率や容積率などが大きい狭小地
などの場合は、むしろ“引く手あまた”の土地にもなり得るのです。
税金が安い
固定資産税などの保有コストが掛かるとは言え、狭小地は面積が小さいためそれほどの金額にはなりません。
従って、必ずしも売却を急ぐ必要はなく、借地はもちろん、建物を建てて賃貸したり、自己運用をしたりという幅広い選択肢の中から活用策を選ぶことができます。
デメリット
建物が建てにくい
敷地が狭いので、建ぺい率や容積率などによって、建てられる建物の面積は大幅に制限される場合があります。
また、接道義務と言って、4m以上の道路に2m以上接していない場合は、建築そのものが認められません。
もし建てられたとしても、ほとんどの場合オーダーメイドの建物になってしまうので、建築費の坪単価が割高になります。
さらに、狭さを克服するために、スキップフロアや地下室など、コストのかかる設計になりがちなので、注意が必要です。
建物にコストがかかってしまうのでは、売却するにしても賃貸するにしても、あるいは自己運用するにしても収支を悪化させる要因になりかねないからです。
狭小地に向いた活用策と向かない活用策

狭小地に向かない土地活用
賃貸住宅
賃貸マンションは不可能であっても、15坪程度の土地であれば、6戸程度の賃貸アパート経営や、賃貸併用住宅を建てることは不可能ではありませんし、賃貸アパート建築事例もあります。
しかし、当然建築コストは割高になるので、家賃収入の割に返済額が大きくなり、利回りが低くなる懸念があります。
また、隣地が迫っているわけですから窓を取りにくく、隣家の壁しか見えない窓になる場合もあり得ます。
よほど都心の人気エリアなら別ですが、このような圧迫感のある住宅は敬遠される心配があり、入居者で埋まらない可能性が高く、あまりお勧めできません。
戸建賃貸の場合も同じで、家賃収入に対する建物のローン返済比率が50%を超えるようなら、慎重な判断が必要でしょう。
太陽光発電
太陽光発電の収益性はソーラーパネルの数に比例します。
狭小地の場合、設置できるパネルの数が限られ、一方で架台などの初期投資額としての設備費はそれなりに掛かるので、収益性はやや悪化します。
また、隣地が迫っているため、隣地の植木や建物で日照が遮られる心配もあります。
さらに、周囲に住宅が迫っているような立地では反射などによる住民トラブルの懸念も否めません。
この他、広いスペースが必要な医療施設や福祉施設、コンビニ、スーパー、ドラッグストア、コインランドリーなどは物理的に困難なのは言うまでもありません。
仮に開業したとしても、お客様に充分な満足を提供することは難しいので、淘汰される恐れがあります。
狭小地に向いた土地活用
貸店舗経営
人通りの多い立地なら、店舗としての活用も充分考えられます。
ラーメン店や居酒屋、カラオケ、スナック、理・美容室、花屋、弁当店、クリーニング取次店、宝くじ売り場など、比較的小さな空きスペースでも営業可能なお店は少なくありません。
通行客や近隣住民を相手にする店なら駐車場がなくても営業可能なので、10~15坪程度の貸店舗を建てて賃貸経営や、店舗併用住宅を取り入れるのも可能です。
ただし、これらのお店は閉店に追いやられるリスクも高いので、貸店舗用の建物を建てるなら、汎用性の高いものするのが鉄則。
幅広い業種に対応できる設計にしておくことで、次の借り手が見つかりやすくするためです。
また、お洒落なデザインの「プレハブ店舗」も開発されており、これらを利用してコストとリスクの圧縮を図るのも賢い方法です。
駐車場・バイク用駐輪場経営
駐車場運営を取り入れる場合、15坪程度の土地では、土地の形が良くても3~4台の駐車が限度。
それでも、駐車場経営は、投資としての自己資金は殆ど必要ないので、周囲に駐車場需要が見込める立地なら検討する価値はあります。
ほとんど不動産投資としての初期費用が掛かっていませんから、投資回収も容易です。
「月極駐車場」「コインパーキング」の他、「予約駐車場」と言ってスマホなどで空き駐車場を簡単に見つけることができるサービスもあり、登録しておけば、不特定多数の利用者に貸し出すことも可能になってきています。
予約駐車場の参考サイトはこちら
また、クルマではなくバイク用の駐輪場として活用する方法も有効です。
風雨を避けられ防犯性も高いコンテナ型のバイクコンテナは、バイク愛好家に人気が高く、収益性も期待できます。
自販機事業
自動販売機自体は1㎡もあれば設置できるので、建物が建てられないような変形の土地や接道義務(4m以上の道路に2m接する)を満たさない土地でも設置可能です。
自販機事業の収益性は流動人口に大きくかかわってきます。
つまり、所有地の前を通過する人数が多くなければ収益性は期待できません。
仮に10台の自販機を設置しても、売り上げが10倍になるわけではなく、同じ売り上げが10台に分散するだけになるのです。
また、周囲にコンビニなどがある場合も、売り上げは伸び悩む恐れがあり、周囲の環境をしっかり調べてから事業化に乗り出すことが大切です。
自販機には、飲料の他にも食品や雑貨など様々な販売品目があるので、飲料だけでは厳しい場合は立地環境に合った商品の自販機設置も検討してみましょう。
例えば、大人向けの雑誌やDVDなどは、人目が少ない立地の方が好まれるので、人通りの少ない狭小地には、選択肢の一つになるかもしれません。
トランクルーム事業
家庭用の物置のようなトランクルーム(貸し物置)なら、狭小地にも充分設置可能です。
周囲が住宅地などで、収納スペースに困っている方が多く見込まれる立地なら有望な選択肢のひとつです。
トランクルームは比較的少ない投資で事業化でき、ランニングコストも手間もかからず、賃貸住宅経営や貸店舗に比べて“撤退”(借り手との契約を解除して出て行ってもらう事)も比較的容易なのがメリットです。
看板設置
交通量の多い場所にある土地なら、看板設置という方法もあります。
昔に比べると看板の需要は激減していますが、それでも病院や福祉施設、パチンコ店、ショッピングセンターなどの案内を兼ねた看板の需要は根強いものがあります。
このような看板用地に向いた土地は、交差点の近くや幹線道路沿い。
看板面を広く取ることができる幅や奥行きが求められます。
広告料は立地や広告面にもよりますが月額数万円から数十万円という例もあり、しかも一度設置すれば長期にわたり入金されます。
維持管理も地主さんはほぼノータッチでOK 。
所有地が看板設置に向いていると感じたら、看板設置を専門とする広告会社などの専門家に相談してみると良いでしょう。
借地
建物や設備投資のリスクを回避するなら、土地のみを貸し出す「借地」という方法もあります。
ただし、狭いこともあり、借地料はあまり期待できません。
また、契約期限が来れば更地として確実に返還してもらえる「定期借地契約」を結ぶのも鉄則です。
売却
マイホームや店舗用地などとして買いたいという方が現れたら、売却も選択肢の一つと言えます。
「土地は売却するな」というのが“地主さんの常識”とされてきましたが、少子高齢化・人口減少社会に突入した今、潮目はがらりと変わりました。
土地の需要が減り、空き家や都市農地の大量放出も予想される中、今後は土地の値下がり基調が懸念されています。
しかも、条件の良い土地は値上がりし、条件の悪い土地は値崩れを起こすという二極化が予想され、条件の厳しい狭小地は、値崩れしてしまう心配が大なのです。
従って、買い手がいるうちにできるだけ高値で売却してしまうのも、賢明な判断と言えるかもしれません。
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