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建物を建てるだけが土地活用じゃない
土地の所有者は、土地を所有しているだけでも固定資産税や都市計画税などの保有コストがかかります。
そういう意味では“下りエスカレーター”に乗っているようなもので、何らかの土地活用を行い、収益を得ないと“現状維持”さえできません。
しかし、アパートや賃貸マンションを建てれば多額の借金が発生し、金利上昇リスクや空室リスクまで抱え込むことになります。
最悪の場合、賃貸住宅経営を取り入れたことで、資産を失うばかりか多額の借金だけが残るという事態もあり得るのです。
そこまでの収入は必要なく「保有コストぐらい補えれば良い」という地主さんなら、もっとローリスク・ローリターンの土地活用策を探るのも良い方法です。
土地活用により、所得が多くなると、所得税としての負担も生じる事になりますから、更地のまま、ある程度の収益を上げる事ができる土地活用を考える事も良いでしょう。
具体的には、建物を建てるのではなく、更地のまま、もしくは更地に近い状態で土地活用するもので、少ない投資で済み(従って、借金が少なくて済むため金利上昇などのリスクが小さく、短期間に投資を回収できる)、万が一上手くいかなくても手軽に撤退できる(傷口が大きくならない)のが利点です。
具体的に見ていきましょう。
駐車場
所有地にロープなどで駐車スペースを区切り「月極駐車場」などとして貸し出す、いわゆる「青空駐車場」は最も投資額が少なくて済む土地活用方法の1つです。
利用者の募集・管理は地元の不動産会社などに委託するケースが多く、地主さんの手間も殆どありません。
この方法が可能な立地は、住宅地などの駐車スペースがなくて困っているエリア。
とにかく停められれば良いという方が多いので、土のままでも借り手が見つかります。
雑草などの管理がラクなのは、アスファルト舗装の駐車場で、雨でも靴が汚れないため付加価値が上がり、ライバルの駐車場がある場合には差別化になります。
アスファルト舗装はそれほど高いものではなく、広さにもよりますが数十万円程度で収まるケースが多いので見積りだけでも取ってみましょう。
また、駐車場経営にはコインパーキングや立体駐車場もあります。
建物を建てるよりは少ない投資で済むものの、それなりの投資が必要になってくるので、よほどの駐車場需要が見込まれる立地でなければ慎重に判断すべきです。
駐車場の場合、借地借家法の適用とならないため、相続対策としては活用する事が出来ません。
借地借家法の適用とするためには、シャッターがついていたり、施錠が可能となるような駐車場とすれば、相続税評価額が評価減となり、相続税対策となります。
太陽光発電
太陽光発電事業を始めるには、所有地に架台を並べ、ソーラーパネルを設置して送電網に接続する程度なので、数百万円程度の投資で済みます。
「固定価格買取制度」により、概ね10年で投資を回収でき、それ以降はまるまる利益になるという仕組みになっており、手堅い土地活用策と言えます。
太陽光発電事業に向いた土地は、まず太陽光を遮るものがない開けた土地であること。
さらに送電線網に近いことが条件になってきます。
さらに、日光の反射が近隣トラブルになるケースもあるので、民家が近くにないような場所がベターです。
太陽光発電システム自体はシンプルな仕組みなので故障が少なく、比較的メンテナンスがラクなので、多少の遠隔地でも問題ありません。
ただし、落ち葉や雑草、雪などでパネルが埋もれてしまうと発電効率が悪化するので、場所や季節によってはこまめな点検・掃除が必要になる場合もあります。
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自動販売機
日本は世界最大の自動販売機天国で、日本中いたるところに自動販売機が設置されています。
なぜこれほどまでに自販機が多いかというと、治安の良さや夏の蒸し暑さ、忙しい国民性などもあるのですが「自販機の無償貸し出し」という制度が大きく関係しています。
これは、飲料メーカーなどが小売店や地主さんに対し、自販機を無料で貸し出してくれるシステムで、地主さんとしては設置スペースと電気代を負担するだけで手間もリスクもなく販売マージンが手に入るメリットがあります。
所有地が人通り豊富で、近くにコンビニなどがない場所なら、自販機設置という土地活用策も有効な選択肢です。
もちろん、1台あたりの利益は年間数万円から10数万円程度が多いものの、商品補充から代金回収、釣銭補充、空き缶回収、掃除まで一切を代行してもらえるので、地主さんは毎月販売マージンが振り込まれるのを待つだけ。
もしも、より多くの収益を目指したいというのなら、自動販売機を購入して自前で運用するという方法もあります。
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市民農園(貸し農地)
市民農園とは、小規模の農地を一般の方に貸し出して野菜作りなどを楽しんでもらう貸し農地のことを差します。
土に触れ合う機会が少ない都市部に暮らす人々の間で人気が高く、遊休地の土地活用策としても注目を集めています。
人気の高まりを受け、国では法律の改定を進めており、個人でも市民農園を開設しやすい環境を整えつつあります。
遊休地などを個人から借り受けて体験農場などを運営する企業なども登場し、地主さんの選択肢は増えています。
農地に限らず、宅地でも農園として活用できる場合があるので、所有地のある自治体や貸し農園運営会社などに問い合わせてみると良いでしょう。
借地(定期借地権)
土地のみを貸し出し、借地料を受け取るというのも、リスクの少ない土地活用法に挙げられます。
借り手の方が自前で住宅や店舗、工場などの建物を建てて利用するため、地主さんには殆どリスクがない反面、借地料はあまり期待できません。
また、一般借地契約の場合、一度貸し出したら大家さんの都合で立ち退きを迫ることは非常に難しく“一度貸した土地は戻ってこない”とさえ言われています。
このため、あらかじめ貸し出し期限を定めて貸し出す「定期借地権」で契約を結ぶのが鉄則です。
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トランクルーム
列車のコンテナや物置のような収納庫を並べ、一般に貸し出す「トランクルーム」も、投資が少なく比較的次の土地活用がしやすいという点では更地の有効活用に挙げられます。
コンテナそのものは安価で、設置費用もそれほど掛からないので初期投資を抑えられます。
また、運営も防犯カメラを設置する程度で良く、地主さんの手間は殆どありません。
立地としては住宅街に近い生活道路沿い(生活する人々の目に触れやすければ広告なしでも借り手が見つかる)がベター。
ただし、市街地などの住宅密集地で、1世帯当たりの住宅面積が狭い(=収納面積が限られる)エリアが前提となります。
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空き家が建っている場合の注意点
所有地に空き家などが建っている場合、取り壊して更地にした方が良いのかどうか悩んでいる地主さんも多いと思います。
解体工事・処分にそれなりの費用がかかる上、住宅が建っていることで受けられている固定資産税の特例(6分の1に減免)がなくなり、固定資産税が跳ね上がる恐れがあるからです。
しかし、空き家を放置しておくことはゴミの不法投棄や不審火、悪臭や虫の大量発生など様々な近所迷惑の原因になります。
場合によっては周囲の資産価値を低下させたり、固定資産税評価額を下げる原因にもなりかねません。
何より、このような空き家は、やがて迷惑空き家に認定されることになり、固定資産税の減免が受けられなくなるのは時間の問題なのです。
従って、いつまでも空き家をそのままにしておくことはできないのですが、次のような土地では安易に解体しない方が有利な場合があるので注意しておきましょう。
再建築不可物件の場合
所有地が「幅4メートル以上の道路に2メートル以上」接していない場合、建築基準法の「接道義務」に抵触するため、再建築不可物件となっているはずです。
この場合、一旦更地にしてしまうと新たに住宅用地として、建物を建築することはできなくなります。
当然、住宅が建てられない土地では売却価格も大幅に安くなるので、解体ではなくリフォームやリノベーションで空き家を再生させ、賃貸経営などを取り入れていくことを検討した方が良いでしょう。
ただし、接道義務を満たさない土地というのは消防車などが近づけないため、入居者にとってはリスクのある土地となりますから、その分賃料を抑える事になります。
その点をきちんと自覚した上で土地活用する視点を持つことも、忘れてはならないポイントです。