土地活用としての賃貸住宅経営のメリット
土地活用を考える上で、真っ先に検討すべきは賃貸住宅経営です。
それは、第一に高い収益性と安定性(入居希望者のすそ野が広い)が期待できること。
さらには、固定資産税や所得税、相続税などの節税において最も大きな効果が期待できる点にあります。
たとえば“コンビニ用の店舗を建てて貸し出す”場合と比較してみましょう。
まず、店舗の場合、家賃は賃貸住宅の1.5倍~2倍に設定できるとされます。
これだけ見れば賃貸住宅よりも有利に見えます。
しかし、もしもコンビニが閉店に追い込まれたら家賃収入はゼロになってしまいます。
次のテナントを探そうにも、コンビニで失敗した店舗に小売店が入ることは期待できません。
せいぜい飲食店や事務所などに限定されるため、なかなか次の借り手が見つからない恐れがあるわけです。
実際、閉店したまま何年も空き店舗になっている元コンビニ物件は珍しくありません。
一方、賃貸住宅の場合は、入居希望者の絶対数が圧倒的に多いので、店舗物件よりは比較的短時間に空室が埋まります。
その上、アパートのように複数の戸数があれば、10戸の内1戸が空室になっても10%の家賃低下で済みます。
コンビニの場合は、一挙に100%の家賃低下に見舞われることを考えれば、リスクヘッジの点でも有利なのです。
また、税金面では賃貸住宅には様々な減免措置が用意されています。
たとえば、200㎡以下の「小規模住宅用地」なら固定資産税は6分の1、都市計画税は3分の1に減免されます。
毎年のことですので、この減免があるかないかでは非常に大きな違いが生まれます。
また、相続対策としても「貸家建付地」となれば評価額が約2割減、「小規模宅地の特例」を受ければ最大5割減になるなど、大きな節税効果が生まれるのです。
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つまり、家賃収入という1階部分(これは賃貸住宅以外にもあります)に加え、節税効果という分厚い2階部分が乗っているのが、賃貸住宅経営なのです。
賃貸住宅の種類とメリット・デメリット
一口に賃貸住宅と言っても、いくつかの種類があり、それぞれメリットと注意点があります。
順に見ていきましょう。
賃貸マンション
ワンルームや1LDKなど、単身者や若いファミリー向けの間取りの部屋で構成された賃貸用のマンション。
地主さんがオーナーとなり、数十戸規模で経営する比較的大規模な賃貸住宅事業です。
単身者やカップル、ヤングファミリーなどがターゲットなので、通勤・通学に便利な駅に近い場所で、しかも飲食店やコンビニ、コインランドリーなどの生活施設が充実している土地が大前提になります。
メリットは、アパートよりも高い家賃が設定可能な点と、賃貸戸数の多さ。
高層階も可能なので、低層アパートを何棟も建てるよりも効率良く賃貸戸数を増やすことができます。
このため、非常に大きな賃料収入が期待されますが、反面、建設費がかさむのが難点です。
アパートの場合、安価な木造も可能ですが、賃貸マンションとなると鉄筋コンクリートなどの堅牢な建物となります。
さらにエレベーターや給水塔といった設備も必要となり、建設費はもちろん、維持・メンテナンス費用もかさみます。
数年ごとに大規模な修繕も必要で、規模が大きいだけにアパートなどに比べれば修繕費用も莫大になりますから、建築計画をしっかりと立てた上で、土地活用を進める事が大切です。
また、賃貸戸数が多いということは、それだけ入居者管理業務も増え、質の悪い入居者によるトラブルも増えがちです。
このため「一括借り上げ」という形で事業者に管理・運営を丸投げする方が安心と感じる(委託する)オーナーも少なくはありません。
つまり、賃貸マンション経営は規模が大きいため、初期費用はもちろん、維持費や修繕費、管理費といったランニングコストも膨らむ宿命にあります。
家賃収入は大きいものの、出ていくお金も多いので、充分な自己資金のない地主さんは慎重に判断するべきです。
特に建設費の全額を融資に頼るような場合は、家賃収入の大半が融資の返済と入居者管理費用・建物や設備のメンテナンス費用に消え、修繕費用まではなかなかお金が回らないという事態も考えられます。
この場合、数年でマンションの美観や環境が悪化し、入居希望者が激減して空室率の悪化と家賃低下の悪循環に陥る懸念も出てきます。
賃貸マンション経営に乗り出すなら、ある程度まとまった自己資金を用意できるかどうかが重要なポイントになります。
アパート
アパート建築の場合、賃貸マンションよりも建築費を大幅に抑えられるため、土地さえ所有していれば建設費の全額を金融機関からの融資に頼っても「返済比率」を抑えることができるのが第一のメリットです。
返済比率とは、家賃収入に占めるローン返済額の割合で、一般的に50%以内に抑えることができれば安全に経営できるとされていますから、事業計画を見直してみましょう。
また、マンションに比べれば修繕費やメンテナンス費用ははるかに安く、賃貸戸数も10戸以下が多いので入居者管理もラクです。
主に単身者がターゲットなので、通勤・通学に便利で生活施設が充実している場所という点は、賃貸マンションと同じ。
ただ、賃貸マンションとは違って50坪程度の土地にも充分建築可能なので、所有地が狭い場合にもお奨めです。
ただし、最近は相続税対策としてのアパートの建設ラッシュが続いており、場所によっては過剰供給が問題になっていますから、所有地周辺の情報収集はしっかりと行いましょう。
そのような場所では空室と家賃低下のリスクが常に内在しているので注意が必要です。
少なくともアパートならどんな場所でも儲かる時代ではなくなっていることを忘れてはいけません。
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戸建賃貸
戸建賃貸とは、一戸建ての賃貸住宅のこと。
アパートのような集合住宅とは違い、子供の声を気にする必要がなく、広さや水回り、収納スペースなども充実していることからファミリー層に人気のある賃貸住宅です。
ただし、地主さんから見れば同じ土地でより多くの家賃収入を見込めるのはアパートであるため、投資効率の観点から戸建賃貸経営に乗り出す地主さんはそう多くないのが現実です。
それでも、アパートの供給過剰が問題となっているような地域では、アパートとは違う土俵で戦える戸建賃貸はニーズがあり、有望な賃貸住宅事業に挙げられます。
また、ファミリー層がターゲットになることから必ずしも「駅近」である必要はなく、しかも30坪程度の狭小地でも事業化が可能なのは魅力です。
誰も住まなくなった一戸建て住宅を「貸家」として貸し出すことも可能ですが、建物や上下水道などに不具合があれば大家さんの責任になるので、しっかりとリフォームしてから貸し出す必要があります。
見積もりを取ればすぐに1000万円を超えてしまうので、むしろ戸建賃貸用に開発された住宅に建て替えた方がベターでしょう。
性能が良い戸建賃貸であっても、1000万円を切る商品も出てきているので、問い合わせてみると良いでしょう。
戸建賃貸は1戸につき1世帯の賃借人なので、入居者管理は難しくはありません。
ただし、初めて賃貸住宅経営に乗り出すという地主さんは、契約の方法やトラブルの対処などで立ち往生してしまうので、やはり信頼できる管理会社や不動産業者に相談し、提案を受けながら、自分の希望に沿った業者に委託する方が無難です。
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賃貸併用住宅
自宅と賃貸住宅を一体にした住宅のことで、例えば、子供たちが巣立って夫婦2人だけになった自宅を建て替えて、4戸程度のワンルームアパートと2LDK程度の自宅を組み込んだ建物にするといった方法。
老朽化し、持て余し気味だった自宅を、コンパクトに新築しながらその費用はアパート家賃で賄っていくという方法で、収益確保というよりは“より快適な暮らしを賢く実現するための土地活用策”と言えます。
注意点としては、アパートの入居者は単身者なので、通勤通学がしやすい事と生活施設が充実している必要があります。
住宅地にある一戸建ての場合、駅から遠かったり、単身者に必要な生活施設が整っていなかったりすることも多く、単身者には魅力のない場所の可能性があるのです。
あくまでも、単身者にとって魅力的な立地環境であることが、賃貸併用住宅が成立する第一条件になります。
そうでない場合は、戸建賃貸などを検討した方が良いでしょう。
戸建賃貸を取り入れる場合には、建築会社が開催する、イベントやセミナー、実例見学会、街角展示場などに積極的に参加してみると、どのような住宅のニーズが求められているのかがわかるでしょう。