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福祉施設として土地活用するメリット
福祉施設とは、各種の法律にのっとり、社会福祉のために作られた施設を指します。
児童福祉施設(保育所、児童館、児童遊園、児童養護施設、母子生活支援施設、児童自立支援施設、児童家庭支援センター、乳児院など)、老人福祉施設となる介護サービス(老人介護センター、老人福祉センター、軽費老人ホーム、特別養護老人ホーム、老人デイサービスセンター、老人短期入所施設、介護付き有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅など)、障害者福祉施設、身体障害者施設、知的障害者施設、精神障害者施設、重症心身障害者施設、小規模多機能型居宅介護など、多様な介護事業者施設や、通所介護施設があります。
わかりやすく言えば、何らかの支援が必要な“社会的弱者”をサポートするための施設で、地主さんは用地の提供という形で社会貢献しながら土地活用ができます。
福祉施設の場合には、総量規制が建築する施設によって異なりますから、事前に確認をするようにしましょう。
まずは、福祉施設として土地活用する場合のメリットについて押さえておきましょう。
高齢者住宅は、今度更に高齢者人口が増え、高齢化が進む事で、高齢化社会となる事が明らかになっていますから、確実に需要があります。
中には訪問介護を取り入れている人もいますが、介護者の負担が大きいため、多くの人は、住宅型有料老人ホームや、高齢者専用賃貸住宅を利用しているのが現状です。
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今回の記事では、児童福祉系施設と障害者福祉系施設の場合を念頭に解説します。
メリット
安定経営が可能
アパマン経営などの場合には避けられない「空室リスク」も、福祉施設の場合は運営事業者による一括借り上げなので、地主さんは長期安定収入が見込まれます。
そもそも、福祉施設建設が認可されるということは、需要に供給が追い付いていないことを意味しており、利用者がいないという事態に陥ってしまったり、空室や稼働率に悩むこと自体が考えられません(需給バランスが取れているエリアなら、そもそも新規の福祉施設建設は認められないでしょう)。
また、運営事業者も経営の安定性・健全性が高い場合が殆どで、一般の民間企業のように突然の倒産や閉鎖といった心配も少ないのも魅力と言えます。
駅から遠くてもOK
保育園などの一部例外はありますが、福祉施設の多くが駅の近くである必要はありません。
むしろ、近隣住民の反対などを考慮すると、住宅地や市街地でない場所の方が好まれる施設も多く、アパマン経営などには向かない土地の有効な活用策になりえます。
補助金が出る場合がある
社会福祉に貢献することを目的とした施設のため、自治体によっては補助金が出る場合があります。
もちろん審査や規制をクリアする必要はありますが、民間事業者の取引にはない、大きな魅力と言えるでしょう。
注意点
施設によっては住民の反対も
身体障害者施設や知的障害者施設など、一部福祉施設の場合、住民の反対運動が起こる場合があります。
保育園でさえ「子供の声がうるさい」「送迎のマイカーが邪魔」「交通事故の危険性が高まる」といった理由で一部の住民から反対運動が起こり、開園を断念している事例も少なくありません。
従って、住民の理解が得られるかどうかは、福祉施設建設が可能かどうかの大きなポイントになってきます。
反対運動が起こりやすい施設ほど、施設が足りていないケースも多く、だからこそ、住民への根回しと意見の聞き取りに十分な時間を取り、地域の要望を反映した施設を建設していくという姿勢が重要になります。
転用が難しい
福祉施設には目的に沿った独特の設備仕様が必要なため、万が一閉鎖になった場合はそのまま転用することが難しいケースが出てきます。
また、社会的偏見が持たれやすい施設の場合は「あの場所は以前〇〇だった」という歴史が染みついてしまうため、なかなか借り手や買い手が見つかりにくくなる傾向もあります。
それでも「社会貢献のためにはやむを得ない」と考えられる地主さんだけが、手を挙げるべきでしょう。
福祉施設として土地活用するには

土地のみを貸す
既に福祉施設を運営している事業者や団体に、所有地を貸す方法。
つまり、借地契約を結んで毎月の借地代を得る仕組みです。
この場合、地主さんは事業化に向けた資金を一切用意する必要がないのが一番のメリット。
その代り、収益性は低くならざるを得ないのは言うまでもありません。
開設に向けた各種申請や住民への説明などは事業者が行うので、地主さんはとても気軽です。
この方法で土地活用するなら、福祉施設を運営している事業者に連絡を取り、相談してみれば良いでしょう。
建物を建設して貸す
建物を建てて運営事業者に貸し出し、賃貸住宅として、建物の賃料収入を得る方法も可能です。
この場合、土地のみを貸し出すよりもはるかに大きな収益を手にすることができます。
ただし、福祉施設には建築費以外にも設備や機材が必要なケースが多く、地主さんが億単位の資金を用意しなければならなくなることも珍しくはありません。
それでも、福祉施設経営は安定性が高いので、地主さんに潤沢な資金調達力があるのであれば、トライしてみる価値は十分。
条件が合えば、自治体の補助金を利用することも可能かもしれませんので、そのようなメリットを最大限生かす意味でも、地主さんが建物を建設して事業者に貸し出す方法が有効です。
既存の建物を生かす
福祉施設によっては既存の建物を改装して利用するという方法が可能なものもあります。
新築に比べて投資規模を抑えられるため、もしも使っていない建物を保有している場合は検討したい方法です。
福祉施設は地主さんがオーナーとして経営に乗り出すことも不可能ではありません。
しかし、現実にはそれぞれ高い専門知識やノウハウが必要なので、にわか仕込みで経営できるものではありません。
上記いずれの方法であっても、必ず福祉施設の運営事業者と共同で事業化を図っていくのが鉄則と言えるでしょう。
また、自治体などとの連携も不可欠なので、まずは所有地を管轄する役所に相談するのが第一歩と言えます。
障害者向けの住宅について
大規模な福祉施設でなくとも、比較的手軽に社会貢献型の土地活用を行う方法もあります。
実は、障害を持つ人の数は全国で約750万人にも上り、およそ17人に1人が何らかの障害を持って日常生活を送っていると言われています。
これに対し、障害者向けの住宅の供給は非常に少なく、障害者向けの住宅不足が大きな社会問題になっているのです。
これを解消すべく、国では「障害者グループホーム」の整備を後押ししており、多くの地主さんが参入しやすくなっています。
障害者グループホームとは
障害者の方々が「世話人」などのサポートを受けながら居住する場。
アパート、マンション、一戸建てなど様々なタイプがあります。
障害の程度により「共同生活援助(グループホーム)」と「共同生活介護(ケアホーム)」に分けられます。
運営事業者は社会福祉法人やNPO、民間企業など。
運営事業者には、国の給付費がある他、東京都の場合はさらに独自の運営助成費が支払われます。
障害者グループホームの建築要件
障害者グループホームの建築要件は特別厳しいものではなく、30坪程度の土地・建物が用意できれば可能と言われています。
- アパート・マンション・一戸建てなど、いずれも可能
- 1ユニット2人~10人(既存の建物活用の場合は20人まで、事業所の要員は4人)。
- ?個室1人あたり、7.43平方メートル(4.5畳)以上、共用スペースとして、玄関、台所、トイレ、洗面所、浴室、居間(食堂)、他スタッフ控え室などをユニット毎に設けること
- 近隣の別棟も含めた利用が可能(サテライトスペース可) など
立地としては、利便性の良いところがベターです。
障害者の皆さんが働く場所から近く、介護サポートセンターに近いところが望まれます。
また、介護スタッフが通いやすいことも重要なので、あまり不便なところは避けた方が良いでしょう。
障害者グループホームのメリット
- 長期安定経営
運営事業者による一括借り上げなので、一般のアパートなどより長期安定収入が期待されます。 - 投資規模が手軽
アパート・マンション・一戸建ての改装でも可能なので、投資をかなり抑えることができます。 - 競合が少ない
一般のアパートはだぶつき気味であっても、障害者グループホームは絶対数が少ないので競合に巻き込まれにくいのも魅力です。
留意点
- 消防法等の一定の対応が必要
消防法等の一定の規制を受ける場合があり、対応が必要です。 - 入居者の収入は限られる
対象者となる入所者の収入は限られるため、家賃もある程度抑える必要があります。
また家賃の引き上げも難しいと考えておく必要があります。 - 近隣の理解の確保
近隣住民の理解を得るのが大前提です。
計画の段階から近隣を一軒一軒訪問して理解を得るようにしましょう。
場合によっては自治体の協力が得られる場合もあるので、まずは所有地の自治体に相談するのが第一歩になるでしょう。