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ガレージハウスとは
ガレージハウスとはクルマやバイクなどの車庫(ガレージ)と住まいが一体になった賃貸住宅です。
ターゲットはクルマやバイクが好きな富裕層や、サーフィンやジェットスキーなどが好きな趣味人。
一般人ではなく、このようなニッチなターゲットを狙う、賃貸住宅事業の一形態です。
従来の賃貸住宅経営では “ありきたり”な賃貸住宅の方が、幅広いターゲットを狙えるため部屋が埋まりやすく、オーナーのリスクを低減できると考えられてきました。
しかし、人口減少社会に突入し、さらに相続対策でアパート建築ラッシュが続いている現在では「需要を供給が上回る」という事態が発生。
“ありきたり”な物件では「他に埋没してしまう」という問題が深刻化しています。
また、当然のことながら、供給がだぶつけば、駅から近く、生活施設が整い、築年数の浅い物件から埋まっていきます。
駅から遠い、生活環境に少々難がある、といった立地では、アパート経営やマンションの経営は容易ではない時代に突入しているわけです。
そんな中、あえて一般的なアパマン経営の土俵には立たず、特定少数を狙い撃ちする“エッジの効いた”賃貸事業として注目を集めているのがガレージハウスです。
ではまず、土地活用策としてもガレージハウスのメリットを見ていきましょう。
ガレージハウス経営のメリットと注意点
メリット
駅から遠くてもOK
一般客を狙う普通のアパマン経営なら、駅から10分圏内でなければ長期安定経営は難しいとされます。
しかし、クルマやバイクの愛好家をターゲットにするガレージハウスなら、駅の近くでなくとも可能性は充分です。
また、幹線道路沿いは騒音や空気の汚れなどから賃貸物件としては敬遠されますが、ガレージハウスならアクセスに便利な立地としてむしろ歓迎されます。
住宅街のように近隣住民への排気音の気兼ねも必要ありません。
海の近くにある土地ならサーフィンやジェットスキーなどのマリンスポーツ愛好家をターゲットにガレージハウスを展開することもできるでしょう。
住環境はあまり問題視されない
ガレージハウスの場合、セカンドハウスとして借りる方が大半を占めると言われています。
生活拠点は別に持っており、趣味のスペースとして活用する方が多いので、日当たりが悪い、生活施設がないといった住環境はあまり問題にはなりません。
良質な借り手が多い
クルマやバイクを趣味にする方は富裕層が多く、主に30代以降の男性が中心と言われます。
経済力と社会的地位を備えた方が多いため、賃料の未回収や周囲とのトラブルといった問題も少ないと言われています。
また、ガレージハウスの供給量はまだまだ少ないこともあり、相場よりも高い家賃設定でも借り手が見つかるとも言われています。
建築費が比較的安価
1階をガレージ、2階を住居スペースとした場合、同じ建築面積の住宅やアパートなどと比べて簡素な分、建築費を抑えることができます。
建築費を抑えられることは、その分損益分岐点を引き下げられ、経営リスクを抑え込むことにつながります。
ただし、一階にガレージとしての大空間を確保するにはしっかりとした構造計算が必要で、耐震性などへの充分な配慮が必要なのは言うまでもありません。
賃貸住宅としての節税効果も
賃貸住宅扱いを受けることで、アパートや賃貸マンション同様、相続税や固定資産税の各種減免が認められます。
また、ガレージが建物の多くを占めるため、アパートなどよりも建物評価額を抑えることができ、相続税対策として有効なのもポイントです。
もちろん、金融機関のアパートローンも利用可能です。
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注意点
潜在的空室リスク
ガレージハウスの借り手は、あくまでも趣味のために借りているという方が多いため、一般の入居者よりも簡単に解約できる環境にあることが考えられます。
経済的な問題が発生した際には、真っ先に切られるのが、趣味の支出なので、常にこのような潜在的空室リスクを抱えていることは頭に入れておく必要があります。
マンションやアパートとは違い、入居率を維持しにくい状態となりますから、突然の解約に慌てないためには、ガレージハウスの実績豊富な事業者にサポートを依頼し、空室が出ればすぐに次の入居希望者を見つけてもらえる仕組みを確保しておくことが大切です。
ガレージハウスの利用例
ガレージハウスに決まった基準はありませんが、最も多いのは1階がガレージ、2階が居住スペースという構成。
戸建住宅としての居住スペースと言っても一人分の寝室とLDK、水回りを備えた程度のものが多く、家族で住むことは前提とせず、趣味のセカンドハウスもしくはSOHOなど小さな事務所としての利用を前提にした物件が多いようです。
一例を見てみましょう。
クルマやバイクのガレージとして利用

1階ガレージ2階2DKの例
1階はクルマ2台を収納できるシャッター付きのガレージ。
2階はワンルームに水回りを備えただけのシンプルな設計。(画像は2DK)
車やバイクを整備するのに十分なスペースを確保し、そのまま2階で泊まることもできる仕様です。
シンプルなので建築費を抑えることができ、差別化と同時に初期費用を抑えて経営リスクの低減し、収益を上げやすいのもポイントです。
趣味のスペースとして活用する
トランクルームに根強い需要があることでもわかるように、収納スペースに困っている方は少なくありません。
特にアウトドア用品やスポーツ用品など、趣味の道具の収納に困っている方は多く、そのような方が収納を兼ねてガレージハウスを借りるケースが見られます。
また、ガレージの大空間は仲間たちとの宴会スペースや趣味のトレーニングスペースなどにも最適。
趣味の仲間たちとの活動拠点として、数人で家賃を出し合えば、手軽な費用で“秘密基地”が持てるのも魅力でしょう。
アピールの仕方によっては幅広いユーザーのニーズが期待されます。
SOHO、営業所として利用
クルマで営業する業種の場合、商品などの在庫をたっぷりと、安全に収納できるガレージハウスは事務所としても最適なため、少人数の営業所やSOHOとしての利用も期待されます。
近年は通信環境が整い、1人でも充分営業所機能を果たせる時代となっており、駐車スペースと在庫スペースを備えたガレージハウスは魅力的な物件と言えるでしょう。
近年、ガレージハウス専用に設計された商品も多数登場しており、敷地面積や用途に合わせて選ぶことができるようになってきました。
戸建賃貸住宅や木造賃貸アパート、倉庫などを建て替えるのはもちろん、リノベーションしてガレージハウスにすることも可能です。
ただし、特定少数をターゲットにする以上、「客付け」こそが最大の課題になることから、ガレージハウスの実績が豊富で、客付けシステムを持っている事業者に物件管理、賃貸管理を依頼し、事業化することがポイントになるでしょう。
バイクガレージとは
ガレージハウスに似た土地活用策として「貸しバイクガレージ」という事業形態があります。
これは、バイクを収納するコンテナを設置して貸し出すもので、トランクルームに近い仕組みです。
ガレージハウスとの違いは、建物ではなくコンテナを貸し出すだけなので、投資規模が小さく、回収期間が短いのが特徴です。
駐車場や戸建て賃貸住宅、アパート、倉庫などの使っていない敷地の一角にも設置でき、撤収・移転も容易なので、手軽な“未利用地活用策”とも言えます(貸しバイクガレージには賃貸住宅に認められる各種節税効果はないので注意が必要です)。
ターゲットはバイクを大切にする方なので、経済力と社会的地位を備えた良質の契約者が多く、トラブルが少ないと言われます。
ただし、バイク人口は減り続けており、バイク愛好家は限られるため、近隣にどの程度の貸しバイクガレージ需要があるかは不透明です。
大規模なバイクガレージは避け、1台、2台程度からスタートするのが賢明でしょう。